幸雄は、やっといつものゆっきぃになってきました。

日向ぼっこをしたのは、勝春いなくなってから5日後のことでした。
それも、3分くらいだったかな。いつもだったらずーっとお庭にいるのに。
こんな顔してるから・・・見ていた私も、ちょっと辛かったです。
1週間がすぎて、お友達わんこがおうちに来てくれた事をきっかけに
少しずつ明るさが戻ってきました。

庭に迷い込んだボールが目の前にあるのに無関心。
でも今は、少しピーヒコもするようになりました。
かっちは、結婚する少し前に友人宅から私たちのもとに来て、
15年間という長い時間を一緒に過ごしました。
いま勝春がいなくなって、なんだか・・・人生の中でひとつの区切りがきたかんじです。
そんな私達と比べると、幸雄が勝春と過ごした時間は4年あまり。
4年とはいえ・・・24時間ずっと離れることなくかっちと一緒にいた
幸雄の悲しみは、私たちの想像を超えていました。

私たちは、幸雄がずっと一緒にいたからこそ、
勝春の死をちゃんと受け入れられるようにしたいと考えていました。
いなくなってからも、勝春を探すような事があったらかわいそうだから。
だから、あえてお別れにも立ち会えるようにしました。
でもそんな事しなくても、幸雄はすべてわかっていたんだよね。
ごめんね。
いっぱい悲しくて辛い想いをさせちゃったね。
幸雄のすべても、勝春だったのかなぁって思います。
お散歩嫌いの幸雄。
すぐに帰りたい帰りたいと、ジャンプして後ろにさがります。
でもかっちが一緒のお散歩では、1度だって帰りたいっていった事ありません。
お庭でピーヒコに興奮しすぎてバタバタしちゃって、勝春に一喝されても、ボールを勝春に差し出すぐらい好きだったもんね。
5月5日。
A病院から戻った勝春に、すぐ寄ってきてチューをいっぱいした幸雄。
その後もずっとそばにいました。
いつもお留守番の時も、そうやって勝春のこと見ていてくれたんだね。
だって私がいつも「かっちのことお願いね」って言ったんだもんね。
ふと背後で、フローリングに足を取られる様な爪の音がした時・・・。
振り向いた時、幸雄はかっちのそばで立っていました。
かっちが、かろうじて立てていたのは・・・
幸雄が自身のマズルをかっちゃんの胸のあたりにいれて、
勝春の体を支えていてあげたからでした。
それに気づいてすぐに抱き上げ、洗面室に連れて行ったときも
もう一度抱き上げて座りながら勝春と話していたときも
ずっとずっと近くにいてかっちを見ていました。
だけど、かっちがはーっと深く息をはいた時に
そっとその場を離れていったような気がします。
そのあとも、かなりの時間、かっちを抱きながら洗面室の床に座っていた私。
もうかっちゃんは起きないんだ・・・って、そう思って
やっとリビングへ戻ってきた時、幸雄と目が合いました。
ずっとずっとこっちを見ながら、ベッドで小さくなっていました。
もうこの時に、ゆっきぃは判ってたんだよね。

それからは、勝春に近づこうとしませんでした。
私たちが呼んでも、ある一定の距離からこっちへは来なかった。
でも、かっちゃんのそばを私たちが離れて、また部屋へ戻ってきた時にみました。
幸雄がかっちにちゅーをしているのを。
それは、私たちが勝春のそばに居なくなった時だけ。何度も。何度も。
幸雄がふたりだけの時に話したかった事って、何だったのかな・・・。
私たちに、心配かけない為だったのかな・・・。
かっちとふたりだけの秘密があるのかな・・・。
かっちゃんをお骨にしてくれる会社の人がおうちに入って来たとき
今まで見た事のない表情で、2回ないた幸雄。
おうちに来た人は、どんな人でも無条件に大歓迎の幸雄が・・・
1年に数回しかなかない幸雄が・・・
2回連続で泣いたのを、初めて聞きました。
その表情は怯えきっっていて・・・、勝春が連れて行かれちゃうと思ったのかもしれません。
小さな小さなお骨になって、おうちに帰ってきた勝春を拾骨する前に
幸雄に見せながら、説明しました。
くんくんと一生懸命においを嗅いで、気が済むまでにおいを嗅いで・・・
私たちの後ろに座りました。
拾骨の間は、私たちの真後ろでぐっすり眠っていました。
幸雄自身の中で、すべてを理解してくれたのだと思いました。
でも、そんな辛い事に立ち合わせなくても・・・・
ゆっきぃは全部解ってたんだよね。
ごめんね。
そしてありがとう。かっちゃんを愛してくれてありがとう。
これからは、
あなたが、あなたの全てで勝春を守ってくれていたように
私たちがあなたを守っていこうと思ってるんだ。
あなたにとってのかっちゃんの代わりは、とても勤まりそうにないし
私たちだけで、あなたの寂しさを取り除いてあげられるのか・・・
不安だけど。
3人で一緒の時間を作っていこうね。

まだ、勝春に対してああすれば・・・とか、こうしていれば・・・なんて悔いがいろいろいろいろ頭をよぎったりしてるけど・・・。
それは、心の奥に閉まって。
ゆっきぃと一緒に。
ゆっくり一緒にいこうね。ゆっきぃ。
ゆっきぃが、いてくれてよかった。
うちに来てくれてありがとう。
これかもよろしくね。ゆっきぃ。